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 緊急の場合の応急手当てと救命措置 第二回

●応急手当の心

 前回は緊急の場合の傷病者の状況による適切な体位について説明した。今回は具体的な応急手当の方法について説明したい。
 その前に、一つだけ述べておきたいのは、実際に応急手当が必要な場面に遭遇した場合の心構えである。
 倒れている人を前にして、その人に声をかけたり、応急手当をしたりするにはある程度の勇気がいる。まわりに人がいる場合はなおさらで、誰かがやるだろう、と考えがちである。しかしそこは勇気を出して声をかけてほしい。まわりに人がいたら「すみません、手を貸して下さい」と呼びかけてみよう。協力してくれる人は必ずいる。また、倒れている人は体のダメージだけでなく、心理面でもダメージを受けて、非常に心細い思いをしている。「大丈夫ですか。救急車を呼びましょうか」と声をかけてあげるだけで、非常に心強く思うものである。これは、自分が倒れた場合のことを考えてみればわかる。
 これから紹介する応急手当の方法は、安全で確実で誰でも行える救急協会公認のものである。

●応急手当の手順―倒れている人をみたら

 倒れている人をみたら、以下に説明する手順で応急手当を行う。その際、慌てず落ち着いてことに当たること、まわりの人の協力を求めることが大切になってくる。

(1)まず声をかけて意識を確認する

声をかけ肩を叩いて意識を確認する

 「もしもし、大丈夫ですか」と声をかけ、肩を軽く叩いて刺激するなどして反応を見る。同時に汗の有無、顔色は赤いか、青いか、出血の有無などを見る。肩を叩くのは3回ほど、体をゆすったり動かしたりはしない。
 ここで返事があった場合は「大丈夫ですからしっかりして下さい。救急車を呼びましょうか」など、傷病者が安心する言葉をかける。
(2)返事がない場合―意識がないので救急車を呼び口腔内を調べる

口を開けて中を調べる、食べ物や吐物があったら取り出す
 呼びかけや肩を叩いても返事がなく意識を失っている場合は、まず「誰か救急車を呼んで下さい」と、まわりの人に協力を依頼する。
 次に口腔内に食べ物や吐物があるかどうかを調べる。口をかけて中を見て、もし食べ物や吐物があった場合は、顔を横向きにして、指にハンカチかガーゼを巻いて口の中に入れ、吐物などを取り出す。
(3)気道確保―呼吸しやすくなる

気道確保の状態
 意識を失うと、舌が落ち込んで気道をふさぎ息ができなくなる。そこでアゴ先を引き上げ、頭を後ろにそらせて気道を開かせる。これを「気道確保」という。この「気道確保」は、意識がない場合には非常に大切な救命措置になるので、ぜひ覚えてほしい。
(4)呼吸の有無を調べる

呼吸の有無を調べる

呼吸があれば「昏睡体位」を取らせる
 ほほを相手の口と鼻に近づけて、吐く息がほほに感じるか、また同時に胸や腹が動いているか、を5秒間見る。
 呼吸があれば「昏睡体位」をとらせる。「昏睡体位」は、横向き状態にして上腕の肘を曲げてアゴを手の甲に乗せる。気道を確保し吐物を取り除きやすくする。また上側の脚の膝を曲げて体位の安定をはかる。
(5)呼吸がなかったら人口呼吸を行う

人口呼吸を行う
 呼吸がなかった場合は人工呼吸を行う。人工呼吸の方法は、傷病者を「気道確保」の状態にして、鼻をつまみ、大きく口を開けて静かに息を吹き込む。この際、息の吹き込みに合わせて胸が膨らむことを確認する。もし、膨らまない場合は、気道に食べ物や吐物で気道が詰まっているので、これを取り除く。方法は吸い出すなどいくつかあるが、うつぶせにして背中を叩く方法が一般的である。
 抵抗なく息が入り、胸が膨らむことが確認できたら、もう1回、1.5秒〜2秒かけて息を吹き込む。これはちょうど息吹の長さと考えてよい。吹き込む息の量は800ml〜1220ml。この際、注意すべきことは急に大量の息を吹き込むと肺が破れてしまう場合があることである。ふつうの成人男子の肺活量(いっぱいに息を吸った場合)は3000mlであることを目安に考えてもらえばいい。
 こうして息を2回吹き込んだら次は脈をみる。
(6)息を2回吹き込んだら脈を確認し5秒のリズムで人口呼吸を行う

人口呼吸を2回行ったら脈を見る
 最初に息を2回吹き込んだら、今度は脈を確認する。脈は頚動脈を5秒間押さえて確認する。
 脈が確認できたら、5秒間に1回のリズムで人工呼吸をつづける。これは呼吸が回復するか、医師あるいは救急隊に引き継ぐまでつづける。この間、ときどき脈を確認する。人工呼吸のリズムは、成人の場合は5秒に1回だが、10歳以下の場合は4秒に1回、乳児(1歳以下)の場合は口と鼻を一緒に覆って3秒に1回。
 呼吸の回復とは、呼吸数が毎分10回以上となり、呼吸による胸部の挙上(膨らみ)が十分に認められた場合で、ここまできたら人工呼吸を中止してもよい。
 人口呼吸は、傷病者との直接の皮膚接触があるため、どうしてもためらいがある。その欠点をなくすため人口呼吸用マスクがあるので、道場などに常備しておくとよい。
(7)脈がなかったら心肺蘇生のための心臓マッサージを行う

心臓マッサージは胸骨下端から指2本上の部分に圧をかける

心臓マッサージは上半身の体重をかけるように行う
 脈が確認できなかった場合は、心臓マッサージを行う。心臓マッサージは、掌底で胸をリズミカルに圧迫して、停止した心臓の脈を回復させる措置である。
 掌底の部分を使って、胸骨(胸部中心に位置して肋骨を支えている)の下端にある剣状突起から横指2本分上部に圧の中心がかかるように圧迫する。手を重ね、上半身の体重を乗せるような感じで垂直に圧迫する。その際肘は曲げない。圧迫を緩めるときは胸から手が離れないようにする。
 圧迫の深さは3.5〜5cm(沈む感じ)でかなり強い。こんなに強く押さえて大丈夫かというくらいの感じである。専門家が行う場合でも、まれには肋骨が折れることもあるというが、それより生命の方が大切と考えて行う。圧迫が弱いと効果がない。圧迫のリズムは1分間に80〜100回。
 この心肺蘇生を一人で行うときは、心臓マッサージを15回やったら人口呼吸を2回行い、心臓マッサージ15回、人口呼吸2回を交互に繰り返して行う。
 2人で行うときは、心臓マッサージ5回に人口呼吸1回を交互に繰り返して行う。こうして頚動脈と橈骨動脈(ふつう脈を取るときに押さえる手首内側)の両方でしっかりした脈が毎分50回以上になったことを確認したら、心臓マッサージは中止してよい。脈が50回未満の場合や橈骨動脈の脈拍が弱いときは続行する。
 10歳未満の場合も同様に行うが、圧迫する手は片手で行う。また乳児の場合は、圧迫する位置は左右の乳頭を結ぶ線と胸骨が交差する位置より指1本分下側のところを中指と薬指で1.5cm〜2.5cmの深さで圧迫する。毎分100から120回のリズム。
(8)応急手当の際の心得と注意

人口呼吸マスク
傷病者の口に直接触れることなく人口呼吸ができる器具。これを使えば安心して人口呼吸ができる。各救急協会、消防署において、1個3000円で販売している。
 応急手当の際に、相手に万一のことがあったら、という心配は当然ある。そのことが応急手当を躊躇させることにつながる場合もある。しかし民法では、緊急時の管理ということが規定されていて、緊急の際に善意で行ったことが原因で、万一ということがあっても責任は免除されることになっている。
 また、人口呼吸や口腔内の清拭は、傷病者との直接の皮膚接触があるため、細菌の感染、服毒などの場合の二次汚染の心配、不快感などがともなう。そのため、次の点に注意して行う。
1. 口腔内の清拭は、手指にハンカチかガーゼを巻いて行い、事後に手を洗う。
2. 嘔吐物には素手で触れない。
3. 人口呼吸を行うときは傷病者の口や鼻に直接、接しないように人口呼吸用のマスクや使い捨ての人口呼吸マスクを用いるとよい。人口呼吸マスクは、全国の救急協会で3000円で販売している。
4. やむを得ず、直接人口呼吸を行ったときは、事後にうがいをする。
5. 感染の危険が高くて人口呼吸ができないときは、心臓マッサージだけを行う。なお、応急手当について実地に学びたい人は各消防署で救命講習会を開いているので受講されることを勧めます。
 普通救命講習の場合は講習時間3時間でテキスト代1000円、上級救命講習の場合は講習時間8時間でテキスト代は2000円となっている。



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