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「ワールド空手」より
 緊急の場合の応急手当てと救命措置 第一回

●応急手当と「救命率」

 今回は、倒れて起き上がれなかったり気絶したり、あるいは心臓が止まったり呼吸が止まったり・・・。そうした場合の応急手当と救命措置にちて説明したい。
 極真空手の稽古における安全性ということに関しては、師範、指導員をはじめ黒帯などの先輩は、十分な注意を払っている。稽古体系そのものも、入念な準備運動やストレッチを行うなど、怪我や事故の予防を考慮したものとなっている。
 極真空手の競技としての試合ルール(国際空手道連盟ルール)は、直接打撃制の真剣勝負と安全性という2つの側面を追求したもので、1964年の第1回全日本大会以来30年近い経験と歴史を持っている。この間、全日本大会、世界大会を頂点として、各レベルで無数の試合が行われ、その安全性に対する検証は十分にできている。
 しかしながら、空手の稽古、練習は非常に激しい運動であり、また組み手ともなれば、生身の人間が互いに相手に技を当てる。稽古中や試合中に頭部や腹部を強打されて苦しんだり、倒れて頭を打ったり、あるいは激しい運動で持病(心臓欠陥など)が悪化するなどの例がないわけではない。
 そうした場合に、指導員やその場に居合わせた人達が協力して、正しい応急手当をすることは、非常に重要なことである。こうした応急措置は空手の道場における事故だけでなく、家庭や会社、レジャーのおりなど、一般市民レベルでの事故にもあてはまることである。
 応急手当が必要な場面に遭遇した場合、日本では、救急車を呼べばこと足れりとする人が多いが、欧米の場合では、社会人の自覚として、そうした場合の応急措置について、ハイスクールで教えたり、セミナーに参加したりして習得している人が多い。したがって「救命率」は欧米のほうが圧倒的に高い。

●救急隊が到着するまでの応急手当

 救急隊が現場に到着するまでは平均5分間と言われている。その間に居合わせた人が止血や呼吸のための「気道確保」(注意1参照)、心肺蘇生などの応急手当をするかどうかによって、「救急率」に大きな差が出てくるのである。
 極真空手を学ぶ人たちが、救急の現場に出会ったとき、それに落ち着いて対処し、正しい応急手当を行って、一人でも多くの命を救うことができればすばらしいことではないだろうか。
 日本には古来より、武術の裏技として、「活法」が伝えられている。人中の活、丹田の活、総括などと名付けられた活法は、気絶している場合(呼吸もあり心臓も動いているが意識を失っている)、仮死状態の場合(呼吸がなく心臓は動いている)に対して行われる。しかし、これは熟練を要するので、ここでは述べない。
 今回紹介するのは、誰でもできて安全、確実に行える救急協会公認の応急手当である。2回に分けて紹介する。
 1回目の今回は緊急の場合に傷病者の状態によって、とらなければいけない体位を中心に説明する。
 *注意1「気道確保」-意識を失った場合、舌が落ち込んで気道をふさぎ、呼吸ができなくなる。そこでアゴ先を引き上げ、頭を後ろにそらせることで気道を開き、呼吸をしやすくすること。

●まず衣類による緊縛の解除と保温

 緊急の場合に、まず必要なことは、衣類による緊縛を解除して、傷病者の苦痛を和らげ、保温措置をとって体温の低下を防ぐことである。
 まず、帯やベルトを外して暖め、衣類のボタンなども外して、身体を緊迫感から解放しできるだけ楽な姿勢を保てるようにし安静な状態にする。このことで症状の悪化を防ぐ。ただし、無理強いはしない。
 次に保温であるが、これは傷病者の体温を保つために行う。したがって、電気毛布やアンカなどで人工的に熱を加えることはしない。乾いた衣服や毛布を上からかけたり、着せたりする。悪寒、体温低下、顔面蒼白、ショック症状などがみられる場合は、毛布などで包んで保温する。毛布で保温をする場合は上(頭)よりも下(足)をより厚くする。
 その際、服や道着が濡れている場合はそれを脱がせること、汗をかいているときはそれを拭いてから保温を行うことが大切である。
 また、傷病者本人が暑がるときは無理に保温する必要はない。


●緊急の場合の傷病者の状態による適切な体位と注意すべきこと

 救急車あるいは医師が到着するまで、傷病者の状態に適した体位(姿勢)を保つことは非常に重要な応急措置といえる。呼吸や循環機能を維持し、苦痛を和らげ、症状の悪化を防いだり、軽減をはかるために行う処置である。
 その際に、注意することは次のようなことである。
1. 傷病者に意識があるときは、希望するもっとも楽な体位をとらせる。
2. 体位を無理に強制しないこと。
3. 体位を変える場合は痛みや不安感を与えないようにする。
4. 怪我をしている部位は原則として高く保つようにする。
5. もうろうとしているなど、意識に障害がある場合は、完全に回復するまでは、飲食物は与えないこと。
6. 体位管理の後、歩いて帰れる状態になっても、頭部や腹部を強打した場合は必ず医師の診断を仰ぐよう勧めること。
 次に傷病者の状態による適切な体位を写真とともに説明する。原則的にこのような体位が望ましいが、傷病者本人が嫌がったり、苦しそうな場合は、本人の希望する体位、あるいはより楽な体位にすることも必要である。

 原因がわからない場合
とりあえず仰向けにする(背臥位)
 倒れた原因が何か分からないときは、とりあえず仰向けの体位(背臥位)をとらせる。
 そして、傷病者の状況を見ながら、適切な体位に変える。
 貧血、出血性ショック、足の怪我の場合
足側を高くする
 貧血で倒れた場合、多量の出血で顔面蒼白などのショック状態になったとき(出血性ショック)、足に怪我をした場合などは足側を15〜30cm高くする(足側体位)。
 貧血やショックなどの場合は、上体を低くして血液を頭部に流れやすくすることで回復を早める。
 腹部への外傷や腹痛を訴える場合
膝を曲げ上体をゆるやかに上向きにする
 腹部を強打された場合や腹痛を訴える場合は、膝を曲げ上体をゆるやかな上向きにして、腹部の緊張と痛みを和らげる(膝屈位)。このまま横向きになってもかまわない。
 ただし、試合などで腹部を打たれて「ウッ」となったが、意識と戦闘意欲がある場合は、逆に背中を押さえて上体を後ろへ引き腹部を前に出すようにすると、痛みと苦痛が和らぐ。
 頭に外傷がある場合、胸や呼吸の苦しさを訴える場合
上体を斜めに後ろへよりかからせる
 頭に外傷がある場合、または胸や呼吸の苦しさを訴えた場合は、壁などにタオルや毛布を置いて上体を斜め後ろへよりかからせる。
 頭部損傷、脳血管障害の場合
仰向けにして頭を少し上げる
 頭部損傷の場合、脳血管障害の疑いがある場合は、仰向けにして枕を入れ頭部を少し上げて安静を保つ。
 もし意識が無い場合は、この状態からアゴが上を向くようにして、気道確保の姿勢にすることが大切である。意識がある場合は、このままの状態で安静にしておく。
 嘔吐する場合、泥酔の場合、背中に怪我をした場合
横ばいの体位で顔を横に向ける
 嘔吐している場合、泥酔の場合、背中に怪我をしている場合は、腹ばいになって顔を横へ向けた体位(腹臥位)をとる。
 大切なことは、必ず顔を横へ向けること。これで呼吸を確保し、嘔吐物を外部へ放出することができる。
 心臓発作、喘息の発作の場合
座位で頭部を前に
 心臓発作や喘息の発作の場合は、胸や呼吸の苦しさを訴える。その場合は座らせ、膝の上に毛布やふとんを入れて、その上に頭と腕をよりかからせ、楽な姿勢をとらせる。膝の上の毛布やふとんの量が少ないと、よけい苦しくなるので注意すること。
 昏睡状態の場合
側臥位でアゴを手の甲に乗せ上側の膝を曲げる
 昏睡状態に陥って意識のない場合、あるいは柔道の締めで落とされた場合などは、窒息を防止し嘔吐物を口から取り出しやすくするため、このような体位をとらせる。
 横向きの状態にし、上腕の肘を曲げてアゴを手の甲に乗せる。これで気道を確保し、嘔吐物を取り除きやすくする。また、上側の足の膝を曲げるのはその方が楽であるし、この体位の安定を保てるからである。

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